スポーツ
Posted on 2013年08月22日 09:59

木村拓也「広島時代の恩師が見抜いたスイッチヒッターの素質」

2013年08月22日 09:59

「球界のキムタク」こと木村拓也選手が、巨人軍のコーチに就任したばかりの春に突然死してから、早くも4年目のお盆を迎える。広島時代に木村選手をスイッチヒッターとして花開かせた恩師で、現在、野球評論家の山本一義氏(75)に話を聞いた。

 10年4月2日午後5時40分頃、広島との試合前のマツダスタジアム。本塁付近でシートノック中に突然、意識を失って転倒。くも膜下出血で、そのまま入院先の病院で7日に息を引き取った。

「『いい指導者になるな』と期待していたやさきでしたからね」(山本氏)

 あまりにも突然の死に、関係者・ファンは一様に声を失ったのだった。

 現役時代のキムタクは“ピッチャー以外はどこでも守れるうえに、スイッチヒッター”という球界屈指のユーティリティプレーヤーとして知られた。

 90年に捕手としてドラフト外で日本ハム入団。92年に俊足と強肩を買われて外野に転向する。そして94年オフに、交換トレードで広島に移籍。ここで打撃コーチの山本氏と出会う。ちなみに過去には、あの高橋慶彦氏をスイッチヒッターに育成していた。

「初めて木村を見た時は、体が小さいな(173センチ)という印象でした。キャッチャー、外野手というフレコミなんだけど、キャッチャーじゃつらいし、当時の広島の外野手には、金本知憲、前田智徳、緒方孝市という将来性のある3人がそろっていましたからね‥‥」

 ポジションはおのずと内野手へとしぼられていった。一方、打者としての育成法に関して、山本氏は考えを巡らせたという。

「身のこなしがすばしっこい。そのすばしっこさを生かして、いかに出塁していくか? それでスイッチヒッターはどうかと思って、本人に話したら、即答で『やりたい!』という返事でした」

 左打ちの練習を一からスタートさせることに、普通の選手は二の足を踏むそうだが、キムタクはみずから積極的に山本氏の提案を受け入れたのだ。

 広島に移って2年目の96年のオフ。山本氏のマンツーマン指導が始まった。

「教えてみたら、器用でしたね。(高橋)慶彦は練習量の多さでカバーしていましたが、木村はもっと器用なところを見せて、思ったより形が早く出来上がったですね。スイッチヒッターとしていちばん大事なことは、変化球でも打てるリズム、間合いを身につけることです。そのために木村の場合は、『ミックス練習』というのをよくさせました。どういう球種が来るかわからない状態で、ピッチャーに投げてもらって、それを打つ練習です」

 一方で、こうも語る。

「ただ、技術的なことはそんなに教えていないんです。むしろ、プロ野球の選手にはチームの一員として協力したり、励まし合ったりする人間関係が大切だ。チームに溶け込むことが、まず先だ、という話をよくしていましたね」

 翌97年のオープン戦で早くも木村は、スイッチヒッターとしてデビューし、結果を出していった。

「木村が亡くなったあと、巨人の選手たちが墓参りに行って涙を流していましたね。あれを見て、木村はジャイアンツの一員になっていたんだなと思って、ボクはうれしかったですね」

 キムタクの明るさと前向きな姿勢は、巨人の選手たちにも、心底愛されたのだった。

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2025年03月23日 05:55

    胃の調子が悪い─。食べすぎや飲みすぎ、ストレス、ウイルス感染など様々な原因が考えられるが、季節も大きく関係している。春は、朝から昼、昼から夜と1日の中の寒暖差が大きく変動するため胃腸の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れやすく...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月18日 05:55

    気候の変化が激しいこの時期は、「めまい」を発症しやすくなる。寒暖差だけでなく新年度で環境が変わったことにより、ストレスが増して、自律神経のバランスが乱れ、血管が収縮し、脳の血流が悪くなり、めまいを生じてしまうのだ。めまいは「目の前の景色がぐ...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月25日 05:55

    急激な気温上昇で体がだるい、何となく気持ちが落ち込む─。もしかしたら「夏ウツ」かもしれない。ウツは季節を問わず1年を通して発症する。冬や春に発症する場合、過眠や過食を伴うことが多いが、夏ウツは不眠や食欲減退が現れることが特徴だ。加えて、不安...

    記事全文を読む→
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2025/7/22発売
    ■620円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク