自民党総裁選は9月27日の投開票日を控え、石破茂元幹事長、高市早苗経済安全保障担当相、小泉進次郎元環境相の上位3人による争いが熾烈を極めている。とはいえ、党員党友票で劣勢に立たされている小泉陣営の危機感は強く、「影の司令塔」である菅義偉前首相を中心に、国会議員票の獲得に血眼になっている。
小泉氏は9月23日、遊説先の鹿児島市で記者団から、菅氏が各議員への締め付けを強めているとの批判が党内から出ていることについて聞かれると、
「総裁選はあらゆる情報が駆け巡る。ひとつひとつにお答えすることではない」
とはぐらかした。他陣営からは菅氏に対し、
「脱派閥を掲げながら、派閥的な動きをしている」
との批判が出ている。普段は歯切れがいい小泉氏だが、菅氏のことになると口を濁す。それだけ菅氏の影響力が大きいということだ。複数の自民党議員によると、
「菅氏はターゲットと決めた国会議員に影響力を及ぼすことができる後援会幹部まで調べあげ、その幹部を通じて、からめ手から圧力をかける手の入れようだ」
「官房長官や首相時代にポストなどで処遇した貸しを返すよう、迫っている」
などの情報が飛び交っている。
真偽はともかく、菅氏は今回の総裁選を事実上「最後」と位置づけ、なりふり構わず小泉氏を支援していることは間違いない。だが、ある中堅議員は手厳しい。
「それくらいの熱意があれば、小泉氏の討論会での受け答えもしっかり教育してほしかった。そもそも保守が多い自民党の総裁選で選択的夫婦別姓を公約に掲げるなんて、ピント外れもはなはだしい。菅氏は他の議員に働きかける前に、することがあったのではないか」
当初は「大本命」と目さた小泉氏だが、どこまで挽回できるか。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)