5月11日に行われたGⅠ・NHKマイルカップ(東京・芝1600メートル)で、1番人気に推されながら「まさかの14着」に惨敗したアドマイヤズーム(牡3)。レース後、鞍上の川田将雅は次のように「敗因」を明かした。
「3コーナーから走りがおかしくなってしまいました。結果的にスタートして200~300メートルで落鉄していました。その影響があったのだと思います」
同馬を管理する友道康夫調教師も「レース中の異変」についてこう語っている。
「結果的に右トモ(右後肢)を落鉄していました。3コーナーでトモが滑っていたし、バランスが悪くなって、直線でも鉄がないせいか、外へ寄れていった。出来は返し馬からいい雰囲気だったのですが、仕方ないですね」
落鉄は脚部の故障やレース中の事故につながりかねないアクシデントである。当然、鞍上は落鉄の瞬間から異変に気付いていたはずで、薄氷を踏む思いでレースを進めていたことは想像に難くない。
そうして迎えた最後の直線。JRAが公開しているジョッキーカメラの映像には、川田が残り400メートルの地点で、次のような苦悶の声を上げる様子が記録されている。
「ああ、止まる」
その直後、川田は気合を入れ直すように「んー!」という唸り声を上げたが、アドマイヤズームはズルズルと後退する形で馬群に沈んでいった。ただし、落鉄だけが惨敗の原因だったかは、いささか微妙である。
今回のレースラップを見ると、テンの3ハロン通過が33秒4。その後もペースは緩まず、1000メートル通過が56秒4と、暴走気味のハイラップだった。アドマイヤズームはこの激流を2~3番手で追走しており、仮に右後肢の落鉄がなかったとしても、後続馬の追撃を凌ぎ切れなかった可能性がある。
いずれにせよ、人馬ともに無事であったことは不幸中の幸いだった。
(日高次郎/競馬アナリスト)