今年のGⅠ戦線はこれまでのところ、東が6勝、西が3勝(障害のJ・GⅠ含む)である。ダブルスコアで東が西を圧倒している形だ。理由はいろいろあるが、2023年10月に美浦の坂路をリニューアルしたことが最も大きいだろう。国枝栄調教師によると、高低差が栗東の坂路以上となったことで、心肺機能がグーンと高まったという。
今週のオークス(GⅠ、東京・芝2400メートル)は現在の流れから、東の馬に注目したい。出走馬は5頭しかいないが、西の馬に十分、太刀打ちできるとみている。エース的存在はもちろん、ルメール騎乗の桜花賞馬エンブロイダリーだが、むしろ狙ってみたいのは、手塚久厩舎のブラウンラチェットとゴーソーファーの2頭だ。
ブラウンラチェットは昨年暮れの阪神JFで、1番人気に推された馬。その時は馬体重が12キロ減ったこともあって、16着に終わる。続く桜花賞では大外枠に加え、出遅れも響いて9着に敗れた。この2戦を見る限り買いづらいのだが、舞台が東京に替わったことで、一変が期待できる。
東京は昨秋のアルテミスSを勝った舞台。輸送の短い関東圏の競馬では2戦2勝と負け知らずで、あのフォーエバーヤングの半妹という血統も魅力的だ。
最終追いは嶋田純次騎手を背に、Wコースで併せ馬。レッドアーバイン(5歳1勝クラス)の4馬身後方から差を詰めると、馬なりのまま併入に持ち込んだ。騎乗した嶋田は「追えばさらにギアが上がりそうな手応えでした」と好評価。1週前調教には本番で騎乗するレーンが跨っており、抜かりはない。手塚師は「体調はいいです。距離が延びるのもプラス」と自信ありげだ。
ゴーソーファーは2走前のフラワーCで、後方から追い込んで3着。重賞でもやれるところを証明した。前走フローラルSはいいところなく16着に終わったが、あれがこの馬の力ではないだろう。馬体は中サイズながら走りは実にパワフルで、牝馬とは思えないほどだ。
最終追いは主戦の津村明秀を背にWコースで併せ馬。レイヤードレッド(3歳未勝利)の3馬身後方から差を詰めると、余力を残して併入した。津村が「この1週間でグーンと良くなった」と言っているように、追うごとに力強さを増している。後ろから行く馬なので他力本願とはなるが、展開がハマるようなら怖い。
なお、レース当日は雨予想となっているが、この2頭は道悪実績のあるキズナ産駒であり、心配する必要はない。
(兜志郎/競馬ライター)