今週末のGⅠ・安田記念(6月8日、東京・芝1600メートル)で人気になるのはシックスペンス(牡4)とソウルラッシュ(牡7)の2頭だろう。しかし両馬には、致命的とも言える「死角」があると、筆者はみている。
絶対的な前提となるのは、安田記念が「マイルGⅠ」であるという事実である。シックスペンスは芝の中距離重賞戦線で実績を残してきた馬だ。中距離からの参戦馬が上位に食い込むことはあるにはあるが、「マイルGⅠは能力の高さだけでは勝ち切れない」というのもまた、偽らざる事実である。
ソウルラッシュもまた、しかり。そもそも同馬は「年齢的にズブさが出てきた」(厩舎関係者)ために心機一転、陣営がマイルから中距離へと大胆な路線変更を試み、GⅡ・中山記念(中山・芝1800メートル)を叩いて(3着)、前走の国際GⅠ・ドバイターフ(メイダン・芝1800メートル)を勝った馬なのだ。
にもかかわらず、今回はマイルGⅠたる安田記念への「出戻り参戦」。マイルに限らず、GⅠは「ついでに勝てる」ほど甘くはない。
同様のことは1200~1400メートル、あるいは1800メートル以上の重賞レースでの実績馬にもあてはまる。なまじ人気になるだけに、馬券的なリスクは極めて大きい。
マイル戦、とりわけマイルGⅠは、やはり「生粋のマイラー」を狙うのが筋、それが揺るぎなき王道である。今年で言えば近走、一貫して「マイル路線で良績を残してきた馬」が波乱の主役となるだろう。否、近走の成績はイマイチでも、マイル路線にこだわりながら地道に実績を積み上げ、前走を叩いて殴り込みをかけてきた馬には要注意である。
中でもジャンタルマンタル(牡4)は激アツだ。同馬は昨年、ホースマンの誰もが渇望するGⅠ・日本ダービー(東京・芝2400メートル)をあえて回避し、GⅠ・NHKマイルカップ(東京・芝1600メートル)に出走して快勝した「生粋のマイラー」だ。
前走の国際GⅠ・香港マイル(シャティン・芝1600メートル)は、最後の直線で決定的な不利があっての惨敗であり、度外視できる。海外遠征での疲れをしっかりと解消して臨む安田記念は、まさに陣営が「狙いすました一戦」と言っていい。
(日高次郎/競馬アナリスト)