JRAでは今週から新馬戦がスタートする。目が向くのはなんといっても今年、産駒がデビューする新種牡馬だ。昨年はナダルがJRAダート2歳戦で27勝というレコードを記録して新種牡馬のチャンピオンとなったが、今年はどうなるか。さっそくみていくことにしよう。
今年の新種牡馬は全部で35頭。その中で最も産駒数が多いのは、2020年の3冠馬コントレイルだ。ディープインパクトの後継種牡馬と期待されているだけあって130頭もいる上に、良血牝馬を数多く付けているのが特徴だ。母父が仕上がり早とスピードに定評のあるアンブライドルズソングなど、2歳戦からしっかり動いていける。
ベストは芝のマイルから2000メートル前後で、父が苦手としていたダートでも走る馬が出てきそうだ。6月15日の東京5R・芝1600メートルの新馬戦でデビュー予定のユマハム(牡、美浦・田中博康厩舎)は2022年の菊花賞馬アスクビクターモアの半弟で、関係者の期待は大きい。
ダノンの名が付いた種牡馬が3頭デビューするが、その中では高松宮記念や香港スプリントに勝ったダノンスマッシュが面白そうだ。祖母ハリウッドワイルドキャットはアメリカ最優秀3歳牝馬になった名牝で、血統的な魅力は十分。サンデーサイレンスの血が入っていないため配合の幅が広く、産駒数106頭と人気を集めた。産駒は父ロードカナロアらしい適性を受け継いでいると評判で、スプリントに長けた馬が確実に出てきそうだ。米国パワータイプの種牡馬が代々配合されており、ダートも十分こなせそうである。
芝のマイルで期待できる種牡馬として、インディチャンプを挙げておきたい。安田記念やマイルCSに勝ったステイゴールドが父で、産駒数は67頭(そのうち12頭はノーザンファーム産)とそれほど多くないが、評判は上々だ。産駒の多くは豊富な筋肉量があり、力強い。ダートも大丈夫だろう。
ダートでの活躍を期待されているのが、チャンピオンズCや帝王賞、JBCクラッシクを勝ったクリソベリル。コントレイルに次いで112頭の産駒数があるのを見ても、期待の大きさがわかる。昨年からダート3冠路線がスタートしたこともあり、ダート競馬への関心が高まっていることは大きなプラス材料だ。産駒は距離不問で走れそうだが、スプリント戦よりは長距離戦の方が向いているだろう。古馬になっての成長力にも期待できる。大本命コントレイルを凌駕するとすれば、クリソベリルだ。
(兜志郎/競馬ライター)