スポーツ
Posted on 2016年10月02日 09:56

天才・武豊「“前人未踏”通算4000勝」を彩ったレース秘話!(3)曲芸師のようなウオッカ騎乗

2016年10月02日 09:56

20161006q3rd

 これはのちに「意図的に出遅れた名騎乗」と言われたりしたが、それは正しくない。関係者のこんな証言がある。

「武はスタートする直前まで、先行して内に切り込むことも考えていた。しかし、馬があまりに入れ込んでいるのを見て、まともなスタートは切れないだろうと断念。ゆっくりと出していくことにしたんです。その当時の阪神は現在とは違ってゲートから1ハロンほどのところに最初のコーナーがあり、普通に出していけば膨れることもありえた。それもわかったうえでの選択だったわけです」

 勝利後、武は「スタンドからどよめきが上がったのはわかっていましたよ」と冷静に語っていたのだった。

 牝馬での名騎乗といえば安田記念2連覇を果たした09年のウオッカだろう。

 単勝1.8倍に推されたウオッカは、中団のインで折り合いをつけながら進む。3コーナーから持ったままで上がっていき、絶好の手応えで直線に入った。あとはスパートのタイミングを計り、抜け出すだけ。ところが前を他馬にふさがれ、行き場がない。隙間ができるのを待っていると、内からディープスカイが手応え十分に抜け出そうとしている。しかたなく、ゴチャつく前団を見ながら、少しずつ外に進路を取ることになる。ようやくチャンスが訪れたのは、ラスト1ハロン過ぎだった。

 ここから天才は、曲芸師のような騎乗を披露する。前を行くサイトウィナーとスーパーホーネットの間を割って入り、一瞬にして抜け出す。最後には前を走るディープスカイをゴール前できっちりと差し切ってみせた。驚くべき瞬発力、そして驚くべき手綱さばき。

 武豊は海外、地方でも多くのビッグレースを制している。

 海外ではステイゴールドが現役ラストランを勝利で飾った01年暮れの香港ヴァーズ(GI)が印象的だ。デットーリ騎乗のエクラーレが残り1ハロンで5馬身差つけていたのを必死に急追。みごとにハナ差で差し切った。見ている誰もが無理だと思えたのを、驚くべき末脚で覆してみせたドラマチックな勝利。

 その末脚を武は「まるで背中に羽が生えているようだった」と評したが、決して大げさではない。

「追い出してから右側に斜行し始めたステイゴールドを、すぐに左の手綱を締め直して立て直した腕はみごとだった」

 と、競馬サークル関係者は声をそろえるのだ。恐らく、武が海外で勝利したGIの中で、最も思い出深いレースだろう。

兜志郎(競馬ライター)

カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2026年09月14日 11:30

    AIは本当に人類を終わらせるのか。専門家のとある主張が世界を震撼させている。その「AI終末論」は、AI開発企業アンソロピックに勤めていた元研究員、ジェイコブ・コクソン氏によるもの。Xで「AI研究関係者の多くが、AIは今後10年以内に人類を破...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    事件
    2026年09月16日 20:30

    「ゾンビたばこ」と呼ばれる指定薬物「エトミデート」は、広島カープに大きな衝撃を与えた忌まわしいブツだ。元広島カープの羽月隆太郎氏にこれを譲り渡したとして医薬品医療機器法違反の罪に問われた会社役員・滝口涼介被告の初公判が9月16日に広島地裁で...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    社会
    2026年09月17日 07:15

    20世紀最大級のミステリーと言われてきた、イギリス・スコットランドのネス湖に生息するという未確認動物(UMA)の「ネッシー」に、再び熱い視線が注がれている。いったいなぜか。一時期は目撃情報が激減し、専門家からは死亡説や、人間の活動を警戒して...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    注目キーワード

    人気記事

    1. 1
    2. 2
    3. 3
    4. 4
    5. 5
    6. 6
    7. 7
    8. 8
    9. 9
    10. 10
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/9/15発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク