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独占インタビュー・北島三郎「さらば、キタサンブラック」(1)所有馬は全て自分の子供

「今年の漢字」が「北」に決まった。その理由にもあげられたキタサンブラックが、有馬記念でラストランを迎える。7度目のGI制覇で有終の美を飾れるか──。オーナーで演歌の大御所・北島三郎が、現役屈指の人気馬との秘蔵エピソードを明かすとともに、50年以上に及ぶ波乱万丈の馬主人生を独占告白した。

 有馬記念が近づくと、「ああ、今年も終わりだな」とつくづく感じますよ。そして今回は、キタサンブラックのラストランです。

 このレースは歌の世界に例えると「紅白歌合戦」。出させてもらうことがどれほど大変なことか。そしてこれまで二度走って、3着、2着と結果を出しているので、「今年こそは」という気持ちはありますよ。

 その一方で、ファンの方には申し訳ないけども、とにかくケガをすることなく、無事にレースを終えてほしいという気持ちもあります。何着でもかまわない。とにかく無事が一番、なんて言ったら怒られるかもしれないけど。もちろん、どの馬よりも先にゴールを駆け抜けてくれたら、こんなにうれしいことはありません。

 馬を持って50年以上になりますが、私は所有している馬は全て自分の子供だと思っています。

 歌手を目指して上京して、デビューしたのが昭和37年。「なみだ船」がヒットして、それからしばらくして初めて買った馬に、自分の息子と同じ「リュウ」と名付けたくらいですから。そのリュウが、中山の1200メートルで新馬勝ちしてくれた時はうれしかったなあ。この感動をまた味わいたいという気持ちと、「1頭だと寂しいな」ということもあって、2頭、3頭と増えていったんです。

 もちろん、たくさん馬を持っていれば勝てるという甘い世界ではありません。自分の馬がビリっけつの時は、厩舎へハッパをかけに行くわけです。「おい、しっかり走ってくれよ!」と。でも、ソッポを向いているの。わかってるんだよね、馬ってのは。「馬の耳に念仏」なんてトンでもないよ(笑)。たまに、すまなそうな顔をしてこっちに来た時は、つい声をかけてしまうんです。

「そうか、お前も一生懸命走っているんだよな」

 もう、怒ってたことなんてどこかに吹き飛んでいるわけですよ。

 大きなレースで勝つ強い馬ばかりがクローズアップされますが、どんな馬だってひたすらゴールを目指してまっすぐ走るんです。転んでも起き上がって、たとえ脚が折れたって、ずっと前を向いて走ろうとする。私たちも舞台に上がったら、「脚が痛ぇ」とか弱音は言っていられませんからね。馬たちが一生懸命走る姿に、自分を重ね合わせて、それを励みにここまで歌手を続けてこられたという実感はありますね。

 私の職業はあくまで歌手です。歌の道を頑張って歩んでいく中で、どこか息抜きできる場が欲しい。最初はそんな気持ちだったのですが、あらためて50年の馬主人生を振り返ると、波乱万丈ですよ。なかなか勝てませんでしたから。牧場に馬を買いに行ったのに、牛みたいなのを買ってしまったなんてこともあってね(笑)。

 金銭的なことで言えば、うちの嫁さんや会社にも、ずいぶん苦労をかけました。もし馬主をやっていなければ、ビルの一棟や二棟は建っていたかもしれません(笑)。それでも全然、苦じゃない。「よし、俺がもっとがむしゃらに働けばいいんだ」と、馬たちに奮い立たされてきたんです。

北島三郎(きたじまさぶろう) 1936年10月4日生まれ。北海道出身。演歌ひとすじ56年。長年にわたる座長公演や時代劇にも出演し、役者としても活躍。文化人として国際交流に貢献し、昨年4月には旭日小綬章を受章した。

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