スポーツ

楽天田中将大と嶋基宏「黄金コンビ」苦闘7年物語(11)交流戦対巨人戦で自信を取り戻す

20131107l

 田中が、躍進の片鱗を見せたのが、WBC敗退後、帰国して初マウンドとなった3月26日の巨人とのオープン戦だった。

 キャンプでの第一声となった声出しでは「優勝するぞ」と叫んだ田中。星野監督の思いと同じく、巨人を破って日本一になるという誓いだった。それだけに初マウンドでは、下手な結果を出すわけにはいかなかった。5回からマウンドに上がった田中は、6回に一死二、三塁のピンチを背負うと、谷佳知、橋本到を凡退させた。また7回一死三塁の場面でも坂本勇人、石井義人を打ち取り「走者を出しても点を取られない」ピッチングを確立していった。

 5月から始まった交流戦での巨人戦は、田中にとって気持ちが高まるマウンドだった。5月22日の登板では、いきなり先頭打者の長野久義に先制ホームランを打たれて気持ちが落ち着かないまま、続く石井にもヒットを打たれた。が、坂本、阿部慎之助を三振で打ち取ると立ち直り、9回完投で7勝目をあげた。失点も初回の本塁打のみだった。

「坂本や澤村(拓一)はやっぱり意識した」

 と田中は1点差の逃げ切り勝利を満足気に振り返った。

 そして2度目の交流戦の対決となった6月9日の試合でも、7回を投げて3安打、無失点で内海哲也に投げ勝っている。田中が巨人戦で負けたのは、杉内俊哉がノーヒットノーランを達成した12年5月30日の試合だけ。巨人戦にはなみなみならぬ自信を持っていた。

「相手が強い巨人であればあるほど、負けたくないという思いはある。特に同級生(坂本)にはね」

 田中は巨人との日本シリーズに特別な感情を持っていたが、それは嶋も同じである。特に高3のセンバツで嶋のいた愛知の中京大中京高は、巨人の西村健太朗がいた広島・広陵高に1回戦で負けていることもあり、巨人への敵対心が人一倍強かったこともチームのモチベーションを大いに高めた。

 交流戦で巨人に2勝をあげた田中の好調ぶりは続いた。「投げる試合は全て勝つ」の言葉どおり、6月9日の巨人戦以降、投げる試合に全て勝ち星がついている。ただ一度だけ、連勝ストップかと思われたのが7月26日のロッテ戦だった。

 田中は鈴木、井口に本塁打を打たれ、2対1とリードされたまま、9回のマウンドを降りた。そしてその裏、抑えの益田直也に対して、押し出しの四球で同点にすると、嶋がまたしてもセンター前ヒットのサヨナラ打で勝ったのだ。「マサヒロを負けさせたくなかっただけ」と語った嶋の働きが、田中のピンチを救ったのであった。

 その後、元ソフトバンクの斉藤和巳の持つ開幕15連勝の記録を破り、元西鉄の稲尾和久(57年)、元巨人の松田清(51~52年)の20連勝と肩を並べたのは、8月9日のソフトバンク戦。

 圧巻だったのは、7回一死三塁のピンチにマウンドに野手が集まった際のことだった。この時に嶋が「マサヒロが望む守備位置にしろ」と声をかけ、主将の松井稼頭央も「そのとおりに守るから」と納得した。

 この時、田中は「前進守備でお願いします」と1点もやらない姿勢を示し、その結果、江川智晃を三振に打ち取り、ゲームセットとした。最後に速球勝負をさせた嶋は「日本記録のその場にいられたことはうれしい」と顔をほころばせた。さらには「16勝のうち2勝は貢献できたかな」とおどけてみせた。田中もこうした野手のバックアップを受け「皆と一緒に野球をやっているんだ」と思ったという。田中の記録が楽天に一体感を作り出したのだ。

◆スポーツライター 永谷 脩

カテゴリー: スポーツ   タグ: , , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
あの「号泣県議」野々村竜太郎が「仰天新ビジネス」開始!「30日間5万円コース」の中身
2
3Aで好投してもメジャー昇格が難しい…藤浪晋太郎に立ちはだかるマイナーリーグの「不文律」
3
「コーチに無断でフォーム改造⇒大失敗」2軍のドン底に沈んだ阪神・湯浅京己のボコボコ地獄
4
【大騒動】楽天・田中将大が投げられない!術後「容体不良説」も出た「斎藤佑樹との立場逆転」
5
完熟フレッシュ・池田レイラが日大芸術学部を1年で退学したのは…