そもそも健康であれば医療費はかからない。つまり、いつまでも健康でいることが何よりの節約術につながるわけだが、自覚症状がなくても健康診断によって病気が判明するケースもある。とはいえ、体の隅々まで調べるのは、それなりにお金もかかるわけで─。
企業に勤める会社員であれば、年に1~2度の定期検診があるが、個人事業主や専業主婦などは、みずから病院に出向かなければいけない。ただ、国民健康保険の加入者に対しては、各市区町村の「補助制度」があり、40~74歳の特定検診であれば、ほとんどの自治体が無料で行っている。
節約アドバイザー・和田由貴氏が話す。
「私も毎年受けています。がん検診が無料で受けられるのですから、どんどん利用したほうがいいですよ」
山王ウィメンズ&キッズクリニック大森・高橋怜奈院長も「成人男性だと、特に胃がんと前立腺がんの検診は受けたほうがいい」と前置きして、こう続ける。
「胃にヘリコバクター・ピロリ菌がいたりすると胃がんのリスクが高まります。なので40歳以上の方は、胃カメラをのむなどして早期発見できる検診は、受けたほうがいいですね。前立腺がんも同様です。がんになると治療費もかかるうえ、入院することによって仕事ができなくなる期間が生まれてしまいます。経済的な損失は計り知れず、ちゃんと検診を受けて、もし、がんが発見されたとしても、早期発見か否かで、その後の展開が大きく変化します」
国立がん研究センターが20年に発表した「最新がん統計」によると、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性が62.1%、女性が48.9%。ほぼ2人に1人ががんにかかっているだけに、高橋院長は「がん保険」の重要性を熱く語る。
「がん保険に入っていなかったため、ものすごく大変な思いをされた患者さんの話をよく見聞きします。なので、がん保険には、ぜひ入っておいてほしいです。大きな出費を未然に防ぐための節約術とも言えます」
備えあれば憂いなしとばかりに、定期的に人間ドックにかかる健康意識の高い人もいるそうだが、
「不要な検診をする必要はありません。厚生労働省で勧められている必要な検診は、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がん。胃がんは胃カメラによる検診で、大腸がんは便の検査です。よく腫瘍マーカーを勧める人間ドックの医療機関などがありますが、前立腺がんを見つけるためのPSAという腫瘍マーカー以外はあまり有効ではないのでやる必要がありません」(前出・高橋氏)
人間ドックで検査をする時、さまざまなオプションを勧められることもある。
「医師に勧められるがままPET検査をしたり、CTスキャンを撮っても、結果『あまりよくわからなかった』と、コスパの悪い印象を覚えてしまうことが多々あります。最近は『尿でがんが見つかる』とうたう線虫がん検査も話題ですが、実はまったくエビデンスがないうえ〝偽陽性〟が出る可能性も高い。そうなると再検査として、さまざまな検診を受けることになり、結果、費用がかさんでCTでムダに被曝して‥‥と、損だらけになってしまうこともあります。なので、検査をする際は、調べてほしい箇所を明確に伝えることも必要です」(前出・高橋氏)
むやみな検査は、お金と時間を失うだけ、ということだが、「そんな時間があるのなら、運動をしたほうがいい」というのは前出・和田氏だ。
「母は若い頃から糖尿病の持病があって通院が当たり前。一日中テレビを見ていて、最期は寝たきりに近い状態でした。その点、父は病院とはほぼ無縁で、毎日ランニングをしていて、暇さえあればジムに行くような人。同じ高齢者でも、医療費だけでみると、こんなに差があるのかと‥‥」
医療費を安くすることも重要だが、病気にかかりにくい体作りも大事なのだ。