昨年10月に起きた脱線事故の影響で、今も全線で運休しているいすみ鉄道が、2027年秋までの運転再開を目指すと発表した。復旧するのは大原駅から大多喜駅の間だけで、大多喜駅から上総中野駅は復旧の費用や期間にかかる調査をした上で決定する。
脱線事故の原因は、木製の枕木が腐食してレールがずれたこと。事故直後はすぐに運転再開できると見込まれていたが、修理に必要な場所が想定よりも多かったため、復旧は何度も先送りになり、結局は2027年秋になった。鉄道ライターは驚きを隠さない。
「すぐに復旧できないとは思っていましたが、まさか2027年秋までかかるとは想像もしていませんでした。その間は代行バスを運行しますが、利用するのは地元の学生がほとんどで、観光客はまず乗らないでしょう。いすみ鉄道は収益を観光客に頼っていますので、大幅な減益が予想されます。2027年秋まで経営が継続されるのか心配になりますね」
いすみ鉄道の危機は、地方ローカル線にとって対岸の火事ではない。木の枕木を使っている路線は他にもあり、いすみ鉄道と同じ脱線事故が起きる可能性があるからだ。もし起きた場合、やはり復旧には長い時間を要する。観光路線なのか、それとも定期利用が中心なのかによるが、運休すればいずれにしても経営は苦しくなる。
そして早くも懸念されているのが、いすみ鉄道と上総中野駅で接続する小湊鐵道だ。
「小湊鐵道はトロッコ列車やキハ40を使った観光急行列車を走らせていることからもわかるように、観光に力を入れています。都心から約1時間で行けるので人気は高く、週末には多くの観光客が訪れます。そのほとんどは東京からJR内房線で五井駅に行き、小湊鐵道に乗って上総中野駅でいすみ鉄道に乗り換え、大原駅からJR外房線で帰ってくるというルート、もしくはこの逆を選びます。いすみ鉄道に乗れないのであれば、この旅をしないという人もいることでしょう」(前出・鉄道ライター)
第二のいすみ鉄道が出てこないよう、祈るしかない。
(海野久泰)