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Posted on 2015年01月21日 09:54

広島カープ・黒田博樹はなぜ「“男気”復帰」に動いたのか?(1)野村祐輔とのある約束

2015年01月21日 09:54

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 24年ぶりの優勝を目指す広島カープが、ついに悲願達成に一歩近づいた。日本人投手では初となる、メジャーで5年連続2桁勝利を継続中のヤンキース・黒田博樹が帰ってくるのだ。ただし、エースが日本球界復帰を決断した裏では、かつて古巣で経験したトラウマを清算する暗闘があったという──。

 07年オフに広島からFA宣言した黒田博樹(39)は、ドジャース入団を決めると会見で古巣に対する感謝を口にし、こう続けた。

「ここまで来たのはカープのおかげ。また日本でやるならこのチームだと思う」

 渡米後の黒田が、12年からのヤンキース時代も含め、7年通算で79勝をあげる活躍をしてきたのは周知のとおり。引退までメジャーのマウンドに立ち続ける決意を固めれば、古巣とのこの約束を果たせなくてもファンは納得してくれたはずだ。しかし黒田は広島への思いを断ち切らなかった。

 パドレスから提示された年俸21億円以上(推定)というオファーを蹴って、単年4億円プラス出来高という条件で黒田がカープ復帰を決めた背景を知る、球界関係者が語る。

「黒田は広島時代に一度も優勝争いができなかったことを悔いていた。渡米後も広島で優勝したいという気持ちを持ち続けていました。実は4年前、まだ明治大学の3年生だった野村祐輔(25)が、ドジャースのトレーニング施設があるアリゾナでキャンプをしていたんです。その時、野球部一行を見つけた黒田が、声をかけました。一同が恐縮する中、広陵高校時代に甲子園で活躍した野村の顔を知っていた黒田はなんと、右手を差し出して『広島で会おう』と告げたというんです。感激した野村は両手でその右手を握り返すことしかできなかったと言っていました」

 その年の秋、野村はドラフト1位で晴れて広島に入団した。一方の黒田はヤンキースへと移籍したが、広島に対する熱い思いは常に抱き続けていたようだ。

「今回、広島との交渉の席で黒田は『俺、まだ野村との約束を果たしてないんですよ』と口にしたといいます。そして昨年の12月27日、ついに広島復帰が決定したと発表された。第一報を聞いた野村は『黒田さん、本当に帰ってくるんだ』と感極まっていたそうです」(球界関係者)

 黒田のなみなみならぬ「カープ愛」は、その野球人生に起因しているという。スポーツ紙デスクが言う。

「高校時代の黒田は野球の強豪校・上宮高校にいましたが、あくまで控えの投手でした。当時はまだ上下関係が厳しく、根性論が表立っていた時代だった。練習中に水を飲むことも許されず、一日中、ただひたすら走らされるような過酷な環境の中、黒田は水たまり、便所、川などの水をすすって口にしていたといい、のちに『安全な水であることを願うしかなかった』と述懐していました」

 それでも、球道を邁進した黒田は力をつけ、専修大学の野球部に進んだ。

「入部当初から球威は一級品だったといいます。初めて投球を見た監督も『ものが違う』とうなったそうです。当時はまだメンタル面が弱く、実力を確実に試合で発揮することができなかった。だが、幸いなことに、当時の専大は投手の数が足りなかったため、黒田にも登板機会が多く与えられた。その結果、課題を克服して頭角を現していったんです」(スポーツライター)

 とはいえ、専大がリーグの一部と二部を行ったり来たりという状況もあり、プロからはノーマークの投手だった。スカウトが品定めに来ることもあまり期待できなかったのだ。

「それでも、1年先輩にプロから注目を集めていた小林幹英がいました。広島のスカウトが小林をチェックしていた際、他球団にはノーマークの黒田の実力を見抜いたんです。96年に逆指名2位で広島に入団。新人時代から登板機会こそ多く与えられましたが、逆指名入団にもかかわらず初めて10勝に到達したのは5年目です。当時、黒田はやっとチームに貢献できるようになったと述懐していました。自分を見いだし、育ててくれた広島に深く恩義を感じているんです」(スポーツライター)

 だから、カープで後輩を開花させようと力を貸すこともいとわなかった。

 広島二軍監督、投手コーチとして黒田を指導した、プロ野球解説者の安仁屋宗八氏が明かす。

「自分が勝てない時でもクサらず、きちっと後輩に手本を見せていましたね。ノック一つ取ってもゴロの捕球を教えたりしながら、エラーすれば『次、頑張れよ』と後輩に声をかけてくれた。実に後輩から慕われていましたよ」

 そんな黒田が秘めていたプランを実行に移すため、昨年からこう口にしていたという。

「体がボロボロになって、現役最後の1年間だけ日本に戻るようなことだけはしたくない。2~3年は日本でやりたい」

 ついに機が熟したということだが、何がきっかけだったのか──。

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