社会
Posted on 2026年05月02日 19:00

【ドキュメント!不適切な昭和】家じゅうハエだらけ!ハエ取り紙・ハエ叩き・蠅帳・学校でハエ取り競技も…

2026年05月02日 19:00

 これからの季節、都会のマンションで一匹のコバエが迷い込もうものなら「不衛生!」とばかりに、血眼になって殺虫スプレーを構えることだろう。だが、昭和の夏は違った。右を向いてもハエ、左を向いてもハエ。この国はかつて、人間とハエが「共生」という名の仁義なき戦いを繰り広げる、ワイルドなワンダーランドだったのである。

 それにしてもなぜ、あんなにハエがいたのか。理由は明白。トイレが汲み取り式だったからだ。家の下には巨大な肥溜めがあり、そこはハエにとっての「巨大空母」であり、ウジ虫たちの「ゆりかご」でもあったからにほかならない。

 夏ともなれば、銀バエがジェット機のように飛び出し、茶の間へと猛攻撃を開始する。当時の食事風景といえば、片手で箸を動かし、もう片方の手でハエを追い払う。おかずの上にハエが止まろうが「手で払えばセーフ」。そんなルールが各家庭で適用されていたのである。

 このハエ軍団を迎え撃つべく、当時の家庭や飲食店には、今では考えられないグロテスクな兵器が鎮座していた。その代表格が、「ハエ取り紙(リボン)」だった。
 天井から画鋲で吊るされた、茶色の粘着テープ。これにハエを誘引する薬剤が塗られており、時間が経つにつれ、ハエがびっしりと貼り付いていく。しまいにはテープ全体がハエで真っ黒に染まり、風が吹くたびに「黒いカーテン」がゆらゆら。

 問題は、この粘着剤が超強力なことだ。背伸びをした拍子に、あるいは立ち上がった瞬間に、自分の髪の毛がこの「ハエの墓場」に絡みつく。あのベトベトとした感触と、耳元で聞こえるハエの断末魔の羽音…。まさに昭和のトラウマである。

空中を飛ぶハエをパチンと撃墜させた

 そして当時の子供たちにとって、「ハエたたき」はもはやスポーツの道具だった。金網製あるいはプラスチック製のハエたたきを手にし、空中を飛ぶハエをパチンと撃墜。力みすぎて壁にハエを粉砕し、母親に「壁が汚れるでしょ!」と怒られたものだが、上級者の中には粘着剤を竹竿の先に塗り、セミを捕る感覚でハエを一本釣りする猛者まで現れたものである。

 驚くべきことに、昭和30年代には学校行事として「ハエ取り競技」が開催され、全校で数万匹の戦果を競い合ったという記録まである。当時のハエは単なる害虫を超えた「共通の敵」であり、倒すべき「モンスター」だったのである。

 もうひとつ、食卓を守る最後の砦だったのが、「蠅帳(はいちょう)」だった。傘のようにパッと開くメッシュ状のカバーで、作り置きのおかずを覆う。
 今思えば、冷蔵庫が完全に普及していなかった時代の切実な知恵なのだが、あのネット越しに見る夕飯の支度は、どこか平和な昭和の象徴だったように思う。

 だが東京五輪を機に都市整備が進み、水洗トイレが普及。その流れの中で、ハエは街から姿を消していった。あのハエたちは今、どこに……。

(乾章)

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2026年09月14日 11:30

    AIは本当に人類を終わらせるのか。専門家のとある主張が世界を震撼させている。その「AI終末論」は、AI開発企業アンソロピックに勤めていた元研究員、ジェイコブ・コクソン氏によるもの。Xで「AI研究関係者の多くが、AIは今後10年以内に人類を破...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    事件
    2026年09月16日 20:30

    「ゾンビたばこ」と呼ばれる指定薬物「エトミデート」は、広島カープに大きな衝撃を与えた忌まわしいブツだ。元広島カープの羽月隆太郎氏にこれを譲り渡したとして医薬品医療機器法違反の罪に問われた会社役員・滝口涼介被告の初公判が9月16日に広島地裁で...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    社会
    2026年09月17日 07:15

    20世紀最大級のミステリーと言われてきた、イギリス・スコットランドのネス湖に生息するという未確認動物(UMA)の「ネッシー」に、再び熱い視線が注がれている。いったいなぜか。一時期は目撃情報が激減し、専門家からは死亡説や、人間の活動を警戒して...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    注目キーワード

    人気記事

    1. 1
    2. 2
    3. 3
    4. 4
    5. 5
    6. 6
    7. 7
    8. 8
    9. 9
    10. 10
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/9/15発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク