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Posted on 2013年05月28日 09:54

宗教学者・島田裕巳「“霊峰・富士山”信仰の原点を探る」(1)修験道の山として開拓された

2013年05月28日 09:54

 伊勢神宮の遷宮とは? そもそも仏教って何? 宗教学者・島田裕巳氏が知っているようで知らない宗教の疑問を解説してくれる新連載がスタート。第1回は世界遺産登録の見通しとなった富士山。日本人の心のよりどころの富士山の歴史や富士講の謎を解き明かした。

 世界文化遺産への登録が間近ということで、富士山が俄然関心を集めている。

 その姿を見ようと、すでに多くの観光客が富士山や周辺の観光地に押し寄せている。無事登録がすめば、登山者の急増も予想され、環境保護の観点から、入山料の徴収も検討されている。

 日本人なら誰もが知っているように、富士山は日本で一番高い山である。しかも、ほかの高山とは違い、山脈の中にあるわけではなく、それだけでそびえていて、山の姿は美しい。

 新幹線で、富士山のそばを通る時には、おのずと車窓に目が行き、今日は見えるのか、どんな姿をしているのかを確認してしまう。

 飛行機から見る富士山もまた格別で、昨年も、東京から富山へ向かう折に見た雲海の中に浮かんだ富士山はまさに絶景だった。

 しかし、富士山は単にその姿が美しいから世界文化遺産に登録されるわけではない。名称は、「富士山と信仰・芸術の関連遺産群」であり、信仰の山だからこそ登録されるのである。

 今でこそ、多くの人たちが富士山に登っているが、昔はそう簡単には登れなかった。ほかの高山に比べれば、険しいとは言えないものの、活火山で、いつ噴火するかもわからない。

 最初に富士山に登った人物としては、聖徳太子や修験道の開祖である役の行者の名前があげられるが、話の内容からしても、これは伝説にすぎない。

 平安時代に、都良香〈みやこのよしか〉という詩人で学者が「富士山記」という文章を残しており、本人が登山した可能性も考えられるが、確かなことはわからない。

 名高いのは、平安時代の12世紀はじめに生まれたとされる末代〈まつだい〉と呼ばれる僧侶で、何度も山頂まで至ったとされている。末代は、山頂に大日寺を建てたとされており、富士山を密教の本尊である大日如来に例えたものと思われる。

 この末代は、富士山麓周辺で盛んになった「村山修験」の祖であるとされる。高い山があるところでは、どこでも修験道が発展している。奈良の大峰山や北九州の英彦山などが有名で、富士山も最初は修験道の山として開拓されていった。

 修験者は、険しい山の中を歩き回り、滝があれば、滝行を実践して、霊的な力を身につけようとする。村山修験の場合には、富士山を直接は拝むことができない西国にも信仰を広げていった。

 そうした地域では、「富士垢離〈ふじごり〉」というものが行われた。行者は川辺に出て、富士山の神を拝し、それで富士山に登ったことの代わりとした。交通の発達していない時代には、この「代参」がどこでも行われていた。

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