サッカー日本代表の森保一監督が、積極的にJリーグの試合を視察している。その目的は、6月のW杯アジア最終予選と、海外組の招集が厳しい7月のE-1東アジア選手権に向けての、新戦力の発掘にある。
W杯出場を決め、これから本大会0でにどれだけチーム力を上げられるか。選手層を厚くするためにも、新戦力の発掘は重要だ。
もうひとつ重要なことは、システムの柔軟性。森保監督はアジア最終予選に入って、3-4-2-1の3バックを採用してきた。初戦の中国に7-0、2戦目のバーレーン戦でも5-0と大勝したことから「攻撃的3バック」と言われたが、3月のバーレーン戦(2-0)、サウジアラビア戦(0-0)では、その3バックがうまく機能しなかった。
バーレーン戦は後半途中から入った鎌田大地(クリスタル・パレス)が自由に動いて相手の守備を混乱させ、なんとかなった。ところがサウジアラビア戦では引いて守った相手を崩せず、両ウイングバックがサイドで孤立。3バックが分析され、思うように機能しなくなっている。
特にサウジアラビア戦は、相手が5バックにしてスペースを消し、日本のウイングバックを孤立させている。それならば4バックにしてサイドに2枚置き、オーバーラップやポジションチェンジで相手の守備を崩せばよかった。試合中に柔軟にシステムを変えることはできなかったのか。
森保ジャパンは、4-2-3-1を基本に、アンカーを1枚置いて中盤を逆三角形にする4-3-3システムも採用してきた。複数のシステムを対戦相手によって、または試合の展開によって柔軟に変えられるようにならないと、本大会を勝ち進めない。
ただ、6月のアジア最終予選では新戦力の発掘が大事。国内組中心のE-1東アジア選手権も、システムを試す大会ではない。
そうなると9月、10月、11月、そして来年3月の国際Aマッチでの8試合で試すしかない。その限られた8試合で、システムと新戦力の両方を試すことになる。
問題は対戦相手だ。森保監督や選手がW杯の目標を「優勝」と言っている以上、それに見合った対戦相手でなければ意味がない。格下相手にいくら勝っても、強化にはならない。
9月にはアメリカ遠征が予定され、対戦相手は開催国のアメリカ、メキシコといわれている。これは本大会のシミュレーションになるし、森保監督のリクエストに協会が応えてくれた。対戦相手の実力は低くない。ただ、10月、11月の国内での強化試合の相手は未定だ。本気でW杯優勝を目指すのであれば、協会のバックアップは絶対に必要となる。
10月、11月はまだW杯欧州予選が行われていることもあり、欧州の強豪国を呼ぶのは不可能。可能性があるのは南米勢だろう。優勝を目指す日本にとって、サッカー王国ブラジル代表はもちろんのこと、カタールW杯優勝のアルゼンチン代表を招聘するのがベスト。
もちろん、簡単なことではない。2022年6月のブラジル代表招聘にかかった金額は、3億円といわれている。さらに翌年、同額でアルゼンチン代表を招聘しようとしたが、要求額が6億円以上で諦めたという話もある。
それでも本気で「W杯優勝」を目指すのであれば、無理をしてでも強豪国と対戦したい。協会のマッチメークに期待したい。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。