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Posted on 2026年05月03日 06:00

プロ野球「オンオフ秘録遺産」90年〈1975年、パ・リーグが「DH制」を導入〉

2026年05月03日 06:00

 1975年4月5日、この年もセ・パ両リーグが華々しく開幕した。

 話題を一身に集めていたのは巨人の新監督・長嶋茂雄だった。初陣である。後楽園に迎える大洋(現DeNA)の秋山登もまた新監督だ。

 と同時に、プロ野球ファンにはもう1つ、大きな関心事があった。同シーズンからパシフィック・リーグが導入した「指名打者(Designated Hitter=DH)制度」という一大改革である。

 この制度は大リーグのアメリカン・リーグが73年に導入。目的は観客動員の増加だった。根拠は「投高打低」にあった。

 東地区の名門であり人気チームのヤンキースが、60年から70年代にかけて優勝から遠ざかっていた。リーグは本塁打が激減して投手が優位に立っていた。

 この影響をまともに受けたヤ軍のピンチは、MLB全体の沈滞に及ぶ。実際、年間観客動員数は減り続けていた。

 日本のプロ野球では、パ・リーグが同じような状況にあった。65年から73年までのV9巨人の大人気の陰で、深刻な観客減に直面していた。

 70年代に入ると、様々な人気回復策を打ち出した。73年には「前・後期制」のプレーオフ制度を導入した。これがファンの関心を呼んで、観客動員数が前年の254万人から406万人へと激増したのだった。

 パの「DH制度」はさらなる観客動員増に向けての「改革第2弾」となったのである。

 投手の代わりに打者が打席に立つことで、打撃戦が期待される。守備に難がある強打者が脚光を浴び、継投策も変わる。投手の完投数も増える。

「9人野球」にこだわる声が根強く残ったのも事実だが、野球ファンの興味・注目の的は、6球団でそれぞれ誰が史上初の指名打者を務めるかにあった。

【西宮球場 阪急(現オリックス)対近鉄(現オリックス)午後3時試合開始】
近 0 1 0 0 0 0 1 0 0=2
急 0 0 0 0 0 4 1 1 ×=6

 阪急のDHは4番・長池徳二(現徳士)、近鉄はやはり4番に座ったクラレンス・ジョーンズだ。

 近鉄が2回、3連打と梨田昌孝の犠飛で先制したが、阪急は6回に2死一、二塁で長池が同点タイムリーを放った。8回にも長池の1号ソロで逃げ切った。「ライトを守って4番を打つという気持ちは捨てへんで」

 こう言いながらも、長池はご機嫌だった。

 ジョーンズは4打数1安打、2三振に終わった。

【仙台・宮城球場(現楽天モバイル 最強パーク宮城)ロッテ対南海(現ソフトバンク)午後2時試合開始】
南 0 0 1 0 0 1 0 0 0=2
ロ 0 0 0 1 0 0 2 0 ×=3

 ロッテのDHは6番・得津高宏、南海は5番のロン・ロリッチだ。

 7回、劣勢のロッテが得津のヒットで逆転への突破口を開いた。無死から江本猛紀の変化球を中前に運んだのだ。

 この1打から4安打を集めて逆転した。ロッテの監督・金田正一は「打つだけの選手は中途半端になる」とDH制反対派だったが、恩恵を受けた。ロリッチは無安打だった。

【平和台球場 太平洋(現西武)対日本ハム 午後1時開始】
日 1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1=3
太 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 2=4

 太平洋のDHは5番に竹之内雅史、日本ハムは太平洋から移籍してきた東田正義で、やはり5番だった。

 日本ハムは1点を追った9回、東田が東尾修から左翼席に同点の1号ソロ弾を放った。阪急対近鉄戦より試合時間が早く、これがDH第1号となった。

 試合は延長戦に突入。11回に東田が二塁打で出塁し、東尾の暴投で一度は勝ち越しのホームを踏んだが、その裏に基もとい満男のサヨナラ安打で敗れた。

 東田は古巣相手に3安打の猛打賞だった。竹之内も1安打した。

 長池、ジョーンズ、得津、ロリッチ、竹之内、東田。6人の歴史的指名打者のこの日の成績は26打数8安打(うち2本塁打)で、打率3割8厘。「DH制」はまずまずのスタートとなった。

 70年からのパの安打数・本塁打数・打率の推移は次の通りだ。

70年 6345安打・821本・2割4分6厘
71年 6619安打・911本・2割5分3厘
72年 6644安打・830本・2割5分6厘
73年 6580安打・765本・2割5分4厘
74年 6227安打・680本・2割4分7厘
75年 6611安打・703本・2割5分4厘
76年 6567安打・659本・2割5分6厘
77年 6576安打・699本・2割5分5厘

 本塁打数は72年の830本から減りはじめ、73年に765本、74年には700本を切った。ホームランは球場に足を運ぶファンが最も期待する、野球の華だ。増えれば観客増に直結する。歴史が証明している。また、投手戦よりも打撃戦が好まれる。

 パの経営者たちが前途の不安を振り払おうとしたのは当然だった。結果、75年の本塁打数は微増した。

 セントラル・リーグも、投手が打席に立つのは今年が見納めだ。27年シーズンから指名打者制度を正式導入する。

 パが実施してから52年目の一大改革だ。75年から導入しているパ同様のルールで、ドラフト、チーム編成戦略・戦術も大きく変わる。

 ちなみに長嶋率いる巨人は大洋に4対8で敗れ、初陣を飾ることができなかった。同年、球団史上初めて最下位に沈んだ。

(敬称略)

猪狩雷太(いかり・らいた)スポーツライター。スポーツ紙のプロ野球担当記者、デスクなどを通して約40年、取材と執筆に携わる。野球界の裏側を描いた著書あり。

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